新婦の手紙 3分・やわらかい調子
お父さん、お母さんへ。
今日まで育ててくれて、ありがとうございました。面と向かって言うのが恥ずかしくて、こうして手紙にしました。
子どもの頃、わたしはすぐに目をうるませる子でした。学校であったことをうまく話せなくて、玄関で立ち止まっていたことがあります。お母さんは理由を聞かずに、台所からお茶を持ってきて、隣に座ってくれました。あのときの、何も聞かないでいてくれた時間が、いまでも支えになっています。
お父さんは、あまり多くを話す人ではありませんでした。それでも、わたしが進路で迷っていたとき、めずらしく長い話をしてくれましたね。自分の失敗の話でした。うまくいった話ではなく、うまくいかなかった話をしてくれたことが、うれしかったです。
家を出てからは、思っていたより連絡をしませんでした。元気にやっているのだから心配ないだろうと、勝手に決めていました。今日、二人の顔を見て、そうではなかったのだと気づきました。
これからは、△△さんと二人で家庭をつくっていきます。うまくできるか分かりませんが、二人でやってみます。困ったときは、遠慮なく相談させてください。
お父さん、お母さん。産んでくれて、育ててくれて、本当にありがとう。これからも、どうかお体を大切に。
中学生の頃、進路のことで言い合いになったことがありましたね。わたしは自分の部屋にこもって、しばらく口をきかずにいました。次の朝、机の上に、お母さんが書いたメモが置いてありました。短い言葉でしたが、あれで気持ちが落ち着きました。あのメモは、いまも手帳にはさんであります。
働きはじめてから、家のことがどれだけ手間のかかるものか、少しずつ分かってきました。毎日ごはんが出てくることも、洗濯した服がたたんであることも、当たり前ではなかったのだと、自分で暮らしてみて知りました。
△△さんのご両親へ。今日から家族の一員に加えていただきます。至らないところばかりですが、少しずつ覚えていきます。どうぞよろしくお願いいたします。