新郎から両親への手紙 3分
父さん、母さん。あらたまってこういう手紙を書くのは初めてなので、少し照れくさいのですが、聞いてください。
僕は、決して育てやすい子どもではなかったと思います。言われたことを素直にやらず、自分で確かめないと納得しない性格でした。中学生の頃には、家で口をきかない時期もありました。あの頃のことを、今も申し訳なく思っています。
それでも二人は、僕のやり方を変えさせようとはしませんでした。心配していたはずなのに、待ってくれていました。あれがどれほど難しいことだったのか、自分がこの歳になってようやく分かってきたところです。
父さん。あなたが仕事の話をほとんど家でしなかったことを、僕は長いあいだ、興味がないからだと思っていました。違いましたね。家に持ち込まないと決めていたのだと、社会に出てから気づきました。疲れた日ほど普通の顔で帰ってきていたことも、今なら分かります。僕にはまだ真似ができません。
母さん。何度かやり直した弁当を、僕は気づかないふりをして食べていました。本当は気づいていました。部活で帰りが遅くなった日に、必ず起きて待っていてくれたことも覚えています。ありがとう。
二人に一つだけ、謝りたいことがあります。進路を決めた時、僕は相談をしませんでした。反対されると思ったからです。でも二人は、決めてきた僕にひとことだけ「そうか」と言って、それきり何も聞きませんでした。あの「そうか」に、どれだけ助けられたか分かりません。
これから僕は、□□さんと新しい家庭をつくります。二人が僕にしてくれたことを、そのまま返せる自信はありません。でも、待つということがどれだけ大きな贈り物なのかは、教わりました。それだけは、忘れずにやっていきます。
父さん、母さん。三十年間、育ててくれてありがとうございました。これからは、□□さんと一緒に、二人に会いに帰ります。