恩師スピーチ 3分・あらたまった調子
ただいまご紹介にあずかりました、新郎◯◯さんの高校時代の担任を務めておりました△△と申します。本日はこのような席にお招きいただき、深く感謝しております。
◯◯さん、□□さん、ご結婚おめでとうございます。ご両家の皆さまにも、心よりお祝いを申し上げます。
◯◯さんを受け持ちましたのは、彼が二年生の時でした。当時の彼は、成績で目立つ生徒ではありませんでした。手を挙げて発言するほうでもありません。それでも私が彼をよく覚えておりますのは、ある一件があったからです。
文化祭の準備で、クラスの出し物が期日に間に合わなくなったことがありました。誰が悪いという話になりかけた時、彼が立ち上がってこう言いました。「残っている作業を全部書き出しましょう。それから、誰が何をやるか決めましょう」と。
犯人を探すのではなく、残っているものを数えるところから始める。十七歳の生徒が、その場でそれを選んだのです。教師として、私が教えたことではありませんでした。彼が自分で持っていたものです。
担任を離れてからも、彼のことは折にふれて思い出しておりました。教師という仕事をしておりますと、教えたことより、教えていないのに生徒が持っていたものの方が記憶に残ります。彼の場合は、それがはっきりしておりました。
卒業の日、彼は職員室に来てこう言いました。「先生、僕は勉強はできませんでしたが、段取りなら人に負けません」と。笑って送り出しましたが、あれは強がりではなく、自分の芯を自分で見つけた者の言葉だったのだと、今になって思います。
あれから十数年が経ちました。今日ここでお会いした◯◯さんは、あの日と同じ目をしておられました。人は変わるものですが、変わらないところを持っている人は強いと、私は思っております。
□□さん、これから先、お二人の前に難しい日が来ることもあるでしょう。その時、彼はきっと同じことを言うはずです。残っているものを、一緒に数えましょう、と。どうぞその手を取ってあげてください。
お二人の歩まれる道が、明るいものでありますよう願っております。本日は、おめでとうございます。